毎日ルナの学習タイム

「それで、どうして家に住まわせたいと思ってるの?」

落ち着いた優しい声で、母さんはオレに問いかける。
母さんの声の効果か、オレもなんとなく気分が落ち着いた。

「彼女はルナ。いろいろあって、ルナとオレはちょっと今、追われる状況になったんです」

「な、何か悪いことでもしたの?それなら、私も一緒に謝るけど……」

さっきとは打って変わって、心配そうな声を出す。

「いや、悪いことをしたわけじゃないんです。た、たぶん……。ただ、オレが余計なところに首を突っ込んでしまって、建物内にいたルナを外に連れ出す形になったんです」

母さんは唖然としている。それもそのはずだ。息子が何かもわからない不確かな事件に巻き込まれていると考えれば、不安になる。

オレは謝りつつ、母さんに正直に話す。

「ごめんなさい。でも、あの時ルナを置いていったら、ルナはずっと一人だったかもしれません。そう思ったら、悲しげな表情をするルナを助けずにはいられませんでした」

母さんが俯向く。そして、ハッとして顔を上げた。

「その、ルナちゃん。あなたは星矢の言う『建物』から出られて嬉しい?困ってないかしら?」

「いや、ルナは言葉がよくわからないので……」

「ん」

ビックリすることに、ルナが自分から母さんに返事をした。でも、嬉しかった。このままずっと母さんを警戒されたら、一緒に暮らせない。

「そう。それなら良かった。本人が望んでないのに、星矢が連れてくるわけないわよね。星矢はそんな子じゃないもの」

「母さん……」

これは、いい状況、いい未来に繋がっているのだろうか。気が抜けて、緊張が解けた体をソファに預けた。

「星矢、もしかして緊張していたの?」

「あ、いや、それは……」

「ん」

「余計なこと言わなくていいですよ、ルナ」

そんな茶番を経て、ルナがオレの家に住み、新しい家族になることを、母さんは了承してくれた。

「じゃあ星矢。夕飯は?ルナちゃんも」

「あ、オレはいいです。緊張でお腹いっぱい……あはは」

これは事実。緊張しすぎて、口に食べ物を入れても、喉を通らないと思う。

「ルナちゃんは?」

そう言えば、あの家で、ルナはいつも何を食べていたのだろうか。あの厳重な警備だと、使用人みたいな人がいるのだろうか。

謎は深まるばかりだ。

「ん〜ん」

ルナは静かに食事を断った。まあ、おかしいとは思わない。オレでさえ、ここにいるだけで緊張していたのに、ルナが不安じゃないわけがない。

ルナにもオレにも、急展開すぎてついていけない。でも、これはオレたちが自分で決めた道。
もう引き返せない。