毎日ルナの学習タイム

しかし、今のオレに、余裕も何もない。情けないとは思うが、自分が逃げることしか考えていない。

体はそれを実行しようとするが、頭の中では、彼女を、ルナを助けたいと思っている。

「(だって、ここにルナを置いていくなんて、なんだか見捨てているような気がしてならないから……)」

ルナにつられて、表情が重くなる。
もはやノイズとしか言いようのない警報の音と女性の声のせいか、なんとなくここから動けない。

『I-BT004、ルナ・エメラルド!命令に従い、それを実行しなさい!』

命令の言葉に、ルナは何かを沈めるように、そして痛みを感じているかのように辛い表情をしながら頭を押さえた。

そして、腕に絡まっているコードのような物を必死で外そうとしている。
それがルナを邪魔しているのではないかと思ったオレは、それを手伝った。

「オレも手伝います。でも、一つだけ。もし、運良く伝わっているのなら答えてください。ここから逃げたいですか?」

辛そうな顔をしながら、理解したかのように、ゆっくりと頷いた。

「ぅん……っ……」

ルナは、寝たきりだったとか、この放送に恐怖を感じているとか、どんな理由かはわからないが、力が入っておらず、巻きついた物をうまく外せていない。
だから、オレが手助けをして、なんとかほどくことができた。
だが、まだ終わってはいない。

『不法侵入者を我々の手でたった今排除します』

その言葉とほぼ同時に、壁から小さな機械がパカッと出てくる。

機械が出てきた瞬間……。

『攻撃準備開始!3、2、1、発射!』

思いもやらない攻撃がオレたちのもとに降り注いだ。
機械から発射されたのは、レーザー弾。レーザー弾が当たった場所は、焼け溶けたり、凹んでいる。

ゾ〜……。

一気に寒気が走ったオレは、ルナの手を掴み、走り出そうとする。
が、ルナは動かない。

「ルナ、走れないんですか?」

「ん」

オレの方をじっと見つめながら返事をする。そうだ。彼女は、先程まで寝ていたのだ。すぐ走れる方が少々おかしい。

オレは、鍵を服にたまたまついていた胸ポケットに無理矢理入れ、ルナを背負うと、一心不乱に外に向かって走り出す。

「わっ!ぅっ!ひぁ!ハァ、ハァ……ルナ、大丈夫ですか?」

「ん」

オレを信頼してくれているのか、体を、頼りないオレの背中に預けてくれた。不安しかない状態だが、今はまず、レーザー弾から逃げるしかこの先の平和的道はない。