「じゃ、あとはこのデータを来週納品すれば完了。さっき確認したけど、エラーもなかったし大丈夫だったわよ。間に合ってよかったわね」

私はPCの画面を見ながら、安堵の息を吐いた。

「ありがとうございました。稲生主任が気づかなかったら、どうなっていたか」

「私が気づかなかったら、きっと安達君がエラーを見つけて対処してたわよ。大丈夫、私が退職しても十分仕事をこなせる実力はあるわよ」

「……まだまだ、自信はないんですけど」

私がプログラムをチェックする間、隣の席で息を詰めて見守っていた安達君が、苦笑する。

「なに言ってるのよ。システム開発の二代目神様って言われるくらいの実力があるんだから、自信を持って頑張って」

私は立ち上がり、硬くなった体を伸ばした。


安達君がこの一週間手こずっていたプログラムの修正を終え、ホッとする。

この仕事の主担当は、入社三年目の安達君で、本来なら私がプログラムに触れることはない。

けれど、たまたま目にしたPCの画面上のプログラムに違和感を感じて声をかけたのだ。

安達君よりも多少長い経験値が役立ったのか、安達君がどうしても解決できなかったエラーの原因を見つけ、アドバイスをした。

そして、安達君が修正をおこない、無事完了。納期に間に合いそうだ。

「稲生さんが退職したら、しばらくの間は右往左往しそうです」

徹夜が続き、疲労を隠せない表情のまま、安達君は肩を落とした。