あと質問ができるのは、私一人。

けれどもう、聞きたいことは決まっていた。


「クイナ。 貴方はその【主】が誰か……
知っているんですか?」


ゴクリと唾を飲み込む音が、
やけに大きく部屋に響き渡る。

結局は、この疑問にたどり着くのだ。

私たちをここに留まらせている、
館の主とは一体誰のことなのか。

その一択に……。

短いような長いような時間。

やっとクイナが口を開いた。

けれどーー。


「…残念ながら、それはわからなくてね。
わたしも知らないのだよ」


なんとも拍子抜けな答えが返ってきた。

でもそれに安心しているような、
やっぱり聞きたかったような。

そんな複雑な心境の私がいた。


「ーーおや。
そろそろ時間のようだ」


首から下げられた時計に目をやり、
クイナが呟いた。


「では、そろそろ失礼するとしようか」


腰につけられた、
フサフサの尻尾が揺れる。


「お、おい! 帰んのかよ!?」

「わたしはきみたちの仲間ではなく、
あくまで、中立の立場なのでね」


そう言い残し、
ドアの向こうに消えてしまった。


「マジかよ。
ほんとに行きやがった……」


来る時も去る時も突然で、
まるで嵐のような人だったーー。