目が覚めると、
そこは見知らぬ場所だった。


「ここは……?」


辺りを見渡して、
その異様さに初めて気がつく。

どこか怪しい雰囲気のお面が
壁一面に並べられている。

この薄暗い場所といい、
気味の悪いお面といい、普通ではない。


「……?
【普通】って、なんだっけ?」


普通が何か知っていたはずなのに、
この館のどこを見て普通じゃないと思ったのか。

どうして、薄暗くてお面が
並べられていると普通じゃないのか。

うまく説明ができなかった。


「きゃあああ!」

「!」


すぐ近くから、誰かの悲鳴が上がる。

反射的に顔を向けると……。


「!?」


その光景に目を疑った。

人の大きさを軽く超える大きさの化け物が、
女の人目掛けて襲いかかろうとしていたからだ。


(なに、あれ……。
黒い炎が揺らめいて見える……?)


その黒い炎の揺らめきは、
化け物を包むようにして広がっていた。