「そんなことより。
お客人にお話しすることがあります」


藤の言葉を遮って、
淡々と男の子の方が言う。

そして女の子は、
近くにいた私を指差し、こう告げた。


「このお方が死ねば、お客人たちは……
二度とこの館から出られません」

「え……」


一瞬で固まる空気。

驚きすぎて、思考が停止する。


(私が死んでしまったら、出られない?
……どうして、そんな………)


「ど、どういうことだよ!?
百合ちゃんが死んだら出れねぇって!」

「そのままの意味です。 お客人」

「馬鹿なんですか。 お客人」


揃う二つの声に、頭が掻き乱される。


「どうしてそうなったのか、
聞きたいんだけど……?」


苛立ちげに、
桜が二人の子どもを睨みつけた。

他のみんなも同じように、
この子たちを警戒している。

そんな様子に、
二人ともが口角をあげた。

そしてーー。


「主ちゃんが望んだことなので」

「我が主の命ですので」


たった一言、それに尽きる。

そう言いたげに、きっぱりと言い放った。

そして瞬きをした次の瞬間には、
二人の子どもはいなくなっていたのだった。