「は? な、何泣いてんだよ!」

「君が泣かせたの? 鈴蘭」

「ち、ちげぇよ! 泣かせてねぇし!
そもそもオレは心配してだな……」


言い争いの合間を縫うように、
睡蓮はよろよろと歩き出す。

その先にいたのはーーー私だった。

動くことの出来ないままでいると、
彼の腕が回り、体を包み込みようにして。

気づいた時には、
力強い腕に抱きしめられていた。

息も苦しくなるような抱擁に、
恥ずかしさより
何故か悲しさがこみ上げてくる。


(どうして、
こんな気持ちになるんだろう……)


さっきはあんなに恥ずかしかったのに。

今度は、……空っぽで寂しい。

でも、この温かさが、
ひどく懐かしいようなーー。


「ああああっ!
オマエ、何してんだよ!?」


けれど、そんな心情もどこへやら。

鈴蘭の大声の叫びに、
すぐ現実へと引き戻された。


「…………鈴蘭、うるさい」