最初は拒否した一馬だったが、確かに、今ここで、全額使って、直ぐまた満里奈の体が崩れ、再手術にでもなったら、その費用は出せない。

…満里奈に手術を承諾させ、費用まで出してしまった零士に、一馬はもう頭なんて上がらない。

「…満里奈、もう少しだけ、二人きりの時間をくれ」

廊下で立ち止まり、外の景色を見ながら、一馬は小さな声で呟いた。

…。

それから幾日が過ぎ、私は何の異常もなく、一般病棟に移ることが出来た。

「…ぁ」

荷物の中から、アメリカにくる前にもらったネックレスの入った箱の袋を見つけた満里奈は袋からそれを取りだし、箱を開けた。

「…これは?」

…ネックレスとは違う別の箱。

正方形の小さな箱。

満里奈は不思議に思いながら、かけられたリボンをほどき、開けてみた。

「…?!」

その中には、大きなダイヤモンドのついた指輪が入っていた。

恐る恐るそれを取り出して、人差し指にはめてみるも、途中で止まってしまう。

「…まさか、そんなわけ」

なんて言いながら、薬指にはめてみたら、ピッタリで、思わず目を見開いた。

ハッとして、慌ててそれを指から外すと、箱の中にしまい、袋に納めた。

一体いつこんなものが袋の中に入ったのか?

…零士が入れたのか?店員が入れたのか?はたまた?

「…聞きたくても、聞けない」

…零士は今、ここにいない。