「いいんですか?!」

満里奈の言葉に、頷く。と、満里奈は嬉しさのあまり、俺に抱きつく。

「…外出なんて、何日ぶりだろう。御崎社長ありがとうございます。嬉しいです」

「…フッ。凄い喜びようだな」

無邪気に喜ぶ満里奈に、こちらも嬉しくなる。

…だがしかし、心の奥では、素直に喜べないでいた。

これは、デートなんかじゃない。


今の満里奈は、立って、歩くことも出来ないくらい体力は落ちている。

…長時間の移動に耐えられる体があるのかすら危うい。

それでも、もう、強行手段にでなければならないほど、満里奈は危険な状態だった。

…小林先生も、満里奈の急変に備え、見つからないように同行してくれる手はずになっていた。

「…明日、満里奈の朝食が終わる頃に迎えにくるから」
「…はい。楽しみにしてます」

…面会時間が終わりの音楽が流れる。

「…それじゃあ、今夜はゆっくりおやすみ」
「…おやすみなさい」

満里奈のおでこにソッと口づけると、満里奈の頬は、紅潮した。

その愛らしい顔に、自然と笑みがこぼれた。

…明日、満里奈と最初で最後のデート。

俺が出来るたったひとつの事。

ドアを閉め、廊下に出た俺は、俯き、手を握りしめた。

「…お前を絶対死なせたりしない」

そう呟くと、顔をあげ、病院を後にした。