無情にもドアは閉められてしまった。

俺はしばらくその場から動けずにいた。

満里奈の体調は…心労なのか?…風邪なのか?…

全くわからない。会って顔が見たい。会って、手を握っていてやりたい。

眠っているなら、優しく頭を撫でてやりたい。

やってあげたいことが沢山あるのに、会うことも、話をすることすらも叶わない。

帰りの車のなかも、満里奈の事しか頭になかった。

家につき、ソファーに座った俺は、眠る満里奈にメールを打った。

『満里奈に会いたい』

たったそれだけのメール。

返事はもうないかもしれない。もう、満里奈に会うこともないかもしれない。

溜め息をついて、携帯をテーブルに置いた。

その時だった。

メールが来たことを知らせる着信音。

俺は直ぐにそれを見た。

『もう、連絡はしません。これが最後です。私の連絡先は全て削除してください』

…こんなことになるなら、最初から満里奈に近づくべきじゃなかった。

おれはただ、満里奈を傷つけただけだった。

守ることすら出来ないで、男として最低だ。

どんなに悔やんでも悔やみきれない。

…次の日、秘書に頼んで、庶務課に満里奈の所在を確認させた。

本当に満里奈は休んでいた。

課長に休んだ理由を聞きたくて、社長室へ呼び出した。


「…社長、お話とは」
「…仕事中に悪いな。渡辺満里奈の休んだ理由を知りたい」

俺の問いに、課長は答えを渋った。…それは何故なのか?

「…答えろ」
「…体調不良としか、聞いておりません」

課長は何かを知ってる顔だった。

「…隠さずに話せ、社長命令だ」
「…プライベートな事なので、答えかねます。申し訳ありません」

課長は頑なに答えようとはしなかった。