しかも、昨晩から満里奈の具合が悪く、定時に仕事を終えた満里奈は、かかりつけ病院に向かった。

「…満里奈」
「…」

あれ以来、会うことを避けていた一馬に会ってしまった。でも、それも仕方ない。

困惑顔をする満里奈に、一馬は早足で近寄ってきた。

「どうした?また、具合が悪いのか?」
「…ぅん」

「…顔色が悪いな」
「…小林先生(主治医)に診てもらうから」

満里奈の言葉に、一馬は頷いた。

「今日はもうすぐ仕事が終わるから、診察終わったらロビーで待ってろ」

一馬の言葉に、満里奈は首をふった。

「…大丈夫、大したことないから。1人で帰れるよ」
「…ダメだ。満里奈の大丈夫ほど、信用できないものはない」

「…あ、お兄ちゃん」

…満里奈の話も聞かず、一馬は行ってしまった。

…一馬の言葉に一理あった。満里奈が大丈夫だと言ったその日のうちに、何度も救急車を呼ぶはめになったこと。

…満里奈が、女子校に通った理由がここにある。

「…小林先生、どうですか?」
「…うん、あまりよくないね。最近はずっと調子良さそうだったのに。心労が重なったのかな?社会人になって、無理することもあるだろうけど、このまま無理を続ければ、入院する事になるから、無理は絶対ダメだよ」

「…はい」

シュンとなる満里奈に、小林は微笑んだ。

「…一馬にはこの事ちゃんと伝えとくよ。薬も出しておくから、しっかり飲んで。出来れば、今週一杯は、仕事休んでほしいな」

「…そんな、迷惑かけられません」
「…満里奈ちゃん。無理はダメだよって言ったよね?」


処方箋を貰った満里奈は、診察室を出た。