俺様社長の溺愛宣言

…オフィスに着くなり、最初に会ったのは、奏。

…何だか気まずい気持ちになり、笑顔も若干ひきつる。

「…お早うございます」
「…おはよう、遅刻ギリギリなんて、珍しいね」

「…朝、ちょっと色々バタバタしてまして」
「…寝坊?」

…全く寝坊はしていないが、そうしておいた方が良さそうだ。

「…はい」
「たまにはそういうこともあるよね」

クスッと笑ってそう言った奏は、仕事を始める。

私もデスクに座って雑用を始める。

「…そういえば、課長たちは?」
「…うん、急な仕事頼まれて、二人で行ったよ」

「…そうですか」

…静かな空気の中、パソコンのキーボードを打つ音と、ボールペンが、紙の上で滑る音だけが響く。

「…渡辺さん」
「…はい」

「…あれから、御崎社長とは、どうなったの?」


仕事には全く関係のない話が出てきて、書き間違えてしまった。

「…渡辺さん?」
「…ぇっとですね」

「…迷惑なら断ったんでしょ?」
「…」

答えに困っていると、奏も困ったような笑みを浮かべた。

「…御崎社長のこと、本当は好きなんでしょ?」

考えもしなかったことを言われ、目を見開き、奏を見た。

「…違った?」
「…分かりません」

「…渡辺さん」
「…そんなこと、考えたことなかったから」

私の本気の言葉に、奏も驚き顔。

「…男の人を苦手だと思ったことはあるけど、好きになったことなんて無かったし、なろうと思ったこともなくて、御崎社長のこと、好きかなんて…」