俺様社長の溺愛宣言

「…お兄ちゃん?!どうしたの?月曜の朝に」
「…海外研修が終わったから、満里奈に会いに来た…で?この男は誰だ?」

物凄い不機嫌な顔の兄、渡辺一馬(36)。

なんてところを見られたんだろうと思わずにいられない。

「…お兄ちゃん、この人は、うちの会社の社長で、御崎零士社長。御崎社長、こちらはうちの兄の一馬です」

二人は顔を見合わせ頭だけを下げる。

「…御崎社長、とにかく今日の所はお帰りください。会社に遅刻します」

「…あぁ、…お兄さん」
「…貴方にお兄さんと呼ばれる筋合いはないが」
「…お兄ちゃん!!」

「…また、お会いすることがあると思いますが、今は時間がないので失礼します」

イラッとした態度をこれっぽっちも出さず、平静を装って、零士は一馬に深々と頭を下げると、その場を去った。

「…満里奈、どう言うことか、説明してもらおうか?」
「…私もこれから仕事なんだけど」

苦し紛れのいいわけに、溜め息をついた一馬はこう言った。

「…分かった。それじゃあ、帰ってきたら、説明してもらう」
「…ぇ、ここにいる気?」
「…さっき、帰って来たところなんだ。寝かせてくれ」

「…もぅ、じぶんちに帰ってよ」

飽きれ気味に応えれば、

「…優しい妹はどこに言ったのか」

と、ボヤくものだから。

「…もう!分かったよ。部屋のものは好きに使って。本当にもうでないと遅刻するから。あ、お腹が空いてるなら、作りおきのおかずが、冷蔵庫にあるから食べてね」


そう言うと、腕時計に目をやると、ワッと声をあげる。

「…やばっ。遅刻!それじゃあね、お兄ちゃん」
「…気をつけて」

私は急いで会社に向かった。