拍子抜けした私は、零士を見つめると、零士はフッと笑みを浮かべた。

「…渡辺さん、そちらが終わったら、連絡するように。必ず」

「…」

黙りこむ私に、名刺を渡した零士はレストランに向かって行ってしまった。

私は名刺を見つめ、どうしようか困り果てる。

「…しなくてもいいんじゃない?」
「…え?」

背後から奏の声が聞こえ振り返る。

「…御崎社長と親しいんだね」
「…親しい訳じゃ」

「…だって、手を繋いでた」
「…あ、あれは勝手に社長が」

「…迷惑なら言わなくちゃ。例え社長でも」
「…そうですけど」

「…言えないなら、代わりに言おうか?」
「…それは、」

「…それとも、まんざらでもないのかな?」
「…迷惑な…はずなんです」

「…はず?」

私の言葉に、きょとんとする奏。

「…すみません、水嶋さん、直接社長に言ってきます!」
「…え?渡辺さん!」

呆気に取られる奏をその場に残し、私はレストランに走った。

…辺りをキョロキョロしながら、走っていると、零士が車に寄りかかって電話をしていた。

「…御崎社長」

私の声に気づいた零士は、目を見開いた。

早々に携帯を切ると、私の元に歩み寄る。