…言われるままに、零士を抱き締めたけど、逆に抱き締められて、困惑する。

好きだと言われて、悪い気はしないが、やはり男の人は苦手だ。特に、零士みたいな人は尚更。

「…社長、もういいですか?」
「…離さない」

「…社長」
「…キスしたら帰してやる」

そんな目で見つめられたらどうしていいかわからない。

「…無理です」
「…それじゃあ、離さないし、帰さない」

うー、早く帰りたい。

私は、意を決して、零士のおでこにキスをした。

「…それは、キスとは言わない」

そう言って、零士は私の唇にそっと口付けた。

直ぐにはなれると思ったのに、離れない。

どんどんキスは激しくなる。

私は、息もままならないまま、ただ必死にそのキスを受け入れる。

「…ん…しゃちょ…」

初めてのそれに、私はとけてしまいそうになる。

「…これがキスだ、覚えとけ」
「…」

涙目で零士を見ると、零士は困ったような笑みを浮かべた。

「…そんな目で見るな」
「…ぇ」

「…帰したくなくなる」
「…?!」

私はさっと、自分の顔を手で隠した。

すると、零士はクスッと笑って、私の頭を撫でた。

「…約束だ。今夜はもう帰してやろう。遅いから、送る」


そう言うと、私を家まで送ってくれた。

…家に帰った私は力なく座り込む。

…嫌なのに嫌じゃない。

この言い様のない気持ちは一体?

その正体はわからないまま、しばらく方針状態だった。