俺様社長の溺愛宣言

顔色は悪いまま、庶務課に戻ると、奏が心配そうな顔で満里奈を見て言った。

「…お疲れ様…どうしたの?顔色悪いよ?」
「…そうですか?気のせいです」

そう言って、精一杯の作り笑いを浮かべる。

「…もうお昼だし、社食行くけど、渡辺さんは?」
「…え、あ、行きます」

デスクの上の鞄を持つと、奏の後ろにつく。

すると、奏はクスッと笑うので、満里奈は意味がわからず首をかしげる。

「…渡辺さんて、昭和の人だな」
「…?」

「…隣に並べばいいのに、一歩後ろとか、奥ゆかしいと言うか」
「…奥ゆかしいなんて、おこがましいです。私はただ無意識にやってただけで、言われるまで気づきませんでした」

ドギマギしながら答える満里奈を見て、やっぱり奏はクスクスと笑う。

「…嫌じゃないなら、隣を歩いてくれると助かるんだけど。話しもしやすいし」
「…ぁ、はい」

言われるままに隣に並べば、また、笑われてしまい、歯がゆくなった満里奈は思わず、恵にするみたいに奏の腕を軽く叩いた。

「…もぅ、意味がわかりません!笑わないでください」
「…お?やっと素の渡辺さんが見れた」
「…?!」

その言葉に満里奈はハッとした。

奏は満里奈が気楽にいられるように、気を遣っての行動だったらしい。

それがわかった満里奈は、やっと、素直な笑顔を浮かべた。

その笑顔に、奏は、ドキッとする。

満里奈はこんなに可愛らしい笑顔ができるのかと…