「…御崎社長、あの、ずっと傍にいてくれたんですよね」
「…ん?そうだが、どうした?」

突然の満里奈の言葉に、零士は何事かと思う。

「…お仕事が」
「…ぇ、あー」

…二人の時間を満喫したいと思う零士とは、真逆の満里奈。満里奈はいつも、自分の事より人の事を気遣う。

零士はクスッと笑う。

「笑い事じゃありませんよ。私のせいで」
「…満里奈」

オロオロしだした満里奈の手を零士はぎゅっと握りしめた。

「…仕事は部下に任せてある。火急の用がない限り、心配ない。今は、満里奈の傍に居ることが、一番大事なことだと思ってる」

「…御崎社長」

「…満里奈はいつまで俺を御崎社長って呼ぶんだ?下の名前で呼んで欲しいのに」

「…零士、さん?」

改めて、下の名前で零士を呼ぶ満里奈は、どこか気恥ずかしそうにしていて、それがまた愛らしく、零士はまた、クスッと笑った。

…それから、目の覚めた満里奈の診察をした小林先生の帰宅許可がおりたので、満里奈は零士に連れられ駐車場に向かっていた。

零士の車のところに、一馬が二人を待っていた。

満里奈は一馬を見つけるなり、零士の後ろに隠れてしまう。

零士は満里奈を安心させるように手を握る。

そんな二人を見て、一馬は手を握りしめた。

「…渡辺さん、満里奈は私が連れて帰ります。白衣を来ているということは、お仕事でしょう?心配なさらなくても、ちゃんと送り届けますので」