…満里奈をアメリカに連れていき、手術を受けさせると約束した零士。

費用も全て零士が負担する。

しかも、満里奈の手術の無事を確認した後は、仕事のため、帰国しなければならない零士の代わりに、一馬に満里奈をお願いする。

その間は、満里奈と、一馬、二人だけの時間を過ごせるよう、退院し、帰国する迄、零士は満里奈に会わないと誓った。

一馬の満里奈への気持ちは充分にわかっていた。

だから、二人だけの時間を邪魔する気にはなれなかった。

その代わり、帰国したら、満里奈の人生は全て零士に一任すると、一馬は約束していた。


満里奈が元気に過ごせるなら、満里奈の幸せを考えるなら、それが一番いいと、一馬自身もわかっていた。

それでも、満里奈を、零士に引き渡すことが出来ない。

一馬は、心底満里奈を愛しているから。

…。

仕事を終えた零士は、自宅へ戻るため、駐車場に向かって歩いていた。

…その横を誰かが通りすぎた。

零士はなぜかその相手が気になって、振り返る。

「…満里奈?」

…後ろ姿では、誰だかわからない。だが、その後ろ姿は満里奈に似ていた。

日本に居る筈ないのに、なぜそう思ったのか?

だが、声をかけずにはいられなかった。

「…満里奈」

相手の手をつかみ、声をかけると、相手の女性が振り返る。

「…御崎社長?…満里奈って、…渡辺さんの事ですか?」
「…」


背格好もスタイルも髪型さえも、満里奈に似せていた相手の女性は、同じ総務課の亜香里だった。

…が、零士は亜香里が満里奈と同じ総務課の人間だと知らない。