《ただ顔がかっこよくてバスケがうまかったの。 ほんとにそれだけだったのあの時は。》






 「今日の練習試合、スタートはいつも通り珠璃はセンター、架世と望那がガード、律華がセーフティーで前に走って里葉がインサイド珠璃1人にしてリバウンドだけ2人で行く形にする。相手はこの間の大会で競った小笠原中だからな。気を抜いて負けないように。いけ!」
咲坂大学附属第三中学校、通称「咲坂第三中」の体育館に県内の中学校のバスケット部なら知らない人はいないだろう県内No.1の敏腕コーチ白樺先生の声が響き渡る。
 「いくよ!いーちにっさん!」
 咲坂第三中の女子バスケ部キャプテン高田望那の大きなかけ声のあとに続く、
 「「「おすっっ!!」」」
 大きさはおそらくどの学校にも負けないであろう部員全員の声。
 それからぞろぞろコートに「おねがいします!」という声が5人分聞こえた。

 「ピピーーーッ!」
 試合開始のホイッスルが鳴り響く。
 「これから咲坂第三中対小笠原中の練習試合を始めます。礼!」
 「「「「おねがいします!!!」」」」
 コート上にいる10人が挨拶のあとジャンプボールの位置に移動する。
 咲坂第三中のジャンパーはセンターであり、またエースでもある藤宮珠璃だった。
 2人のジャンパーが定位置についたことを審判が確認すると、ボールを高くあげた。
 「パンッ!!」
 ボールを弾く少し大きめの音が響くとタイマーが動き始めた。
 弾いたのは珠璃だった。
 嬉しそうな様子1つ見せずまるで自分が取ることが当たり前の様な素振りで相手に攻めかかる珠璃。
 ゴールから見て大体45°あたりでパスを受けた律華がゴール下でディフェンスを抑えて面を取ってる珠璃にパスを出すと華麗なロールで2点を決めた。

 そんな調子で試合をしていき、結果的に115対55という点差で終えた。
 大会で競っていたことを忘れさせるような点差だった。






 

 この練習試合が2人の出会い。