「す、すみません騒がしくて……」

「い、いえ……」


お茶とおしぼりを置けば、間近に山瀬さんの顔がある事に気が付いた。

2人で顔を紅くしながら見つめ合う。
話し声があちこちから聞こえているのに私たちの周りだけは音が消えたみたいに静かだった。


「……海咲、さっさと仕事しろ」


チーフの低い声に我を取り戻す。


「は、はい! じゃ、じゃあごゆっくり!」

「は、はい! 頑張ってくださいね!」


山瀬さんに頭を下げてカウンターの中へと戻った。


「……」

「チーフ……?」


仕事に取り掛かろうとすれば隣から視線が感じた。
横を向けばチーフの視線が私に向いている。


「……サーモン2皿入ってる」

「あ、かしこまりました!」


チーフはそれだけ言うと奥へと引っ込んでいった。