守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「……もう少しで22時……いつもならとっくに店に来てる時間なのに……」


数時間待っても山瀬さんは会社から出てこない。

沢山の人がもう既に帰宅したというのに……。
まさか、見逃した……?


「いやそんな訳……」


頭を抱え込めばウィンと扉が開く音がした。


「えっ……ミサキ……さん……」

「山瀬さ……」


見上げれば驚く山瀬さんの顔が目に映る。
だけど、すぐに柔らかい笑顔に変わった。


「どうしてここに!?」


優しい笑顔を見れて嬉しいはずなのに、さっき見た冷たい顔が頭にチラつく。
そう思ったら勝手に口が動いていた。


「……会いにに来たんです……」

「ミサキ……さ……」

「山瀬さんに会いに来たんです」


会っても何かが分かる訳ではなかった。
それでも、山瀬さんのあの冷たい顔をもう見たくはない、それだけは分かるから。


「あ、会いにって……俺に……!?」

「……はい」


しっかりと頷けば、一瞬にして静まり返る。

2人の間を強い風が吹き抜けていく。

私も山瀬さんも口を開く事なく、ただ見つめ合っていた。