守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

エレベーターに乗り52階のボタンを押す。
外が見えるタイプのもので上がっていく度に景色が変わっていく。


「凄いな……」


見惚れていれば、到着した合図の音が鳴り響いた。
慌ててエレベーターから降りて、IT企画部を目指す。

直ぐに辿り着いたはいいが……。
非常に入りずらい。

ガラス張りの扉から中の様子が見えるが、皆忙しそうに働いていた。

そこから微かに聞こえる怒号が足取りを重くさせる1番の原因だ。


「……行くか……」


いつまでもココにいても仕方がない。
その想いで扉に手をかけた。


「早くしろ! 時間ないぞ!」

「まだ出来ないのか!?」


扉を開けた瞬間に、さっきよりも遥かに大きい声が響き渡っている。
皆忙しそうに作業をしており、知らない人間が入って来たと言うのに見向きもされない。


「あ、あの……」

「……はい?」


近くにいた人に話し掛ければ思い切り不快そうな顔をされる。


「杉下さんは……?」

「……あちらです」

「……ありがとうございます」


お礼を言うが、既に視線は逸らされていた。
何て言うか、和やかな空間というよりは息詰まる空間と言った方が正しいのかもしれない。