守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「ここが藤宮商事……」


目の前に聳え立つ巨大なビルに思わず唇が引き攣ってしまう。
見上げれば首が吊りそうなくらいに高い建物だ。

行き交う人もお洒落な人たちばかりだし……。

間違ってもTシャツ短パンでは来ちゃいけない場所だ。

チーフに感謝しながら自分の格好を見た。

白のブラウスと淡いピンクのスカート。
OL風ファッションにしたつもりだったが……浮いていない……よね?

キョロキョロと周りを見渡すが自信がなくなるばかりだ。


「……行こう。早く行って帰ろう」


少し落ち込みながら綺麗なビルへと足を踏み込んだ。


「こんにちは、いらっしゃいませ」

「幸福寿司の者ですが、杉下様に書類をお持ちしました」


受付の女性に事情を説明すると笑顔で頭を下げられる。


「わざわざ申し訳ありません、お話は伺っております。申し訳ありませんがオフィスまで直接お願いいたします」

「え……」

「申し訳ありません、52階のIT企画部までお願いいたします」


まさかの展開に呆然としていれば、首からかけるカードみたいなものを渡される。


「こちらを首にかけて中へお入りください。お帰りの際にご返却お願いいたします」

「は、はい」


あまりにも笑顔で接客される為、嫌とは言えずにオズオズと頷いてしまった。