守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

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「え? 忘れ物を届けるんですか?」

「ああ、さっきお客さんから電話が合ってな、会社まで届けて欲しいって事だ」

「会社?」

「ああ、大事な書類を忘れたとかで。至急だそうだ」


ある日の昼下がり、リビングで寛いでいた私に大将が突然言った言葉。
こういう事は少なくはない。

だがいつもはチーフがいく事が多かった。
方向音痴には任せられないと、いつも自らが行っていた。

方向音痴の自覚は無いが……。


「チーフは?」

「……お前に行けとさ」

「私ですか? まあいいですけど……何処の会社ですか?」

「藤宮商事だ」

「ふ、藤宮商事って!!」


日本有数の大手企業だ。
日本人なら、というより世界にも有名だろう。

そんな凄い人がうちの店に来てたんだ……。

驚いていれば大将は目の前にA4の茶色い封筒を突き出してきた。


「じゃあ頼んだぞ」

「は、はあ」

「それから……今日休みやるよ」

「え?」

「最近、忙しかったからな。サービスだ」


大将は豪快に笑ってリビングを出て行った。