守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「はい、マグロお待ち!」


タイミングがいいのか悪いのかチーフがマグロを持ってきてくれた。
私が山瀬さんの背中を擦っているのを見て、にたりと口角を上げた。


「へ~なるほどな」

「な、何ですか!」

「別に~ってか海咲さ、野暮なこと聞くなよな」

「え?」


チーフが呆れた様にタメ息を吐く。
でもすぐにワザとらしく小声で話し始めた。


「山瀬さんがサーモンを食べてたのは……」

「食べてたのは……?」

「お前が握るからだよ」

「え……?」


予想もしていなかった言葉に固まってしまう。
そんな私を見て山瀬さんは慌てた様にチーフを見つめていた。


「み、水沢さん!? 何言って!!」

「本当の事……ですよね?」

「そ、それは……そうですけど……」


照れながらも肯定をする山瀬さんに言葉が出せなかった。
変わりに顔が熱くなっていく。