守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「中学の時……憧れだった先輩に告白されて……付き合う事になったんです」

「……」

「中2から3年以上付き合ってて……凄く幸せだったけど……」

「けど……?」


黙って聞いていてくれた山瀬さんが首を傾げる。
それに苦笑いを返して話を続ける。


「高校3年になってちょっとしたら……っ……!!」


思い出せば自然に涙が零れる。
蓋をしようと、忘れようと必死になって働いてきた。

でも、結局私はまだ忘れられていないんだ。


「無理しないで下さい! もういいですから……」


山瀬さんは私の涙を見て焦った様に口を開く。
私の肩に向かって伸びてきた手のひらは、直前で拳へと変わる。
私に触れる事なく山瀬さんは励ます様に笑顔を浮かべてくれる。


「泣かないで下さい。大丈夫ですから」


霞む視界に山瀬さんの笑顔が映る。

何でそんなに優しいのだろうか。
私には理解出来ない。

でも……。
昔の事がなかったら……真っ直ぐに山瀬さんの優しさを受け止められたのだろう。