「なあ、頼むよ」

「……女遊びも大概にしてくださいよ!」

「お! やってくれるか?」

「……大将だけに負担掛ける訳には行きませんからね」


私が休めば大将は少しとは言え、1人で店を回す事になるだろう。
バイトの子たちは一応、シフトは入ってはいるが来るかどうかさえ謎だ。


「優しいねー海咲は」

「……その代わり! 明日の休みは変わってくださいよ!」

「んっ! じゃあ今日は俺の代わりにまるっと入ってくれ!」

「……は?」

「じゃあ頼んだぞ!」


声が遠くなったと思ったら階段を駆け下りる声が聞こえてくる。

どうやら逃げられた様だ。
タメ息を吐いてベッドへと飛び込んだ。


「……」


体は疲れているはずなのに。
頭には、山瀬さんの声がこびり付いていて消えていかない。


「もう……意味分からない……」


目を瞑って何も考えない様に心掛ける。
でも何故か山瀬さんの人懐っこい笑顔が浮かんでくるんだ。