「マグロと雲丹、お待たせしました」


お客様へとお出しし、次の作業へと移る。

お寿司を作りながら視線をずらせば、女子大生のバイト2人がカウンターを片付けながらお喋りをしている光景が目に映った。

傍に座っているお客様が不快そうに2人を見ている。


「っでさ~ソイツったら遊びだって気が付かずに本気になってる訳!」

「何それウケる!!」


甲高い声も腹が立つが、話の内容が苛立たしかった。


「しかも! 相手には本命がいるんだよ!?」

「ヤバいそれ! 痛すぎる!!」


ケラケラと、耳障りなその声に怒鳴りたくなる気持ちを抑えて作り笑顔を浮かべる。


「2人とも、片付けは1人でお願い。それと、どちらか1人は表を掃除して来て下さい」


完璧なその作り笑顔。

気が付いてるのは大将とチーフくらいだろう。


「えーでも外熱いしー……」

「1人はつまんないから2人で行かない!?」

「それいい! じゃあ掃除してきまーす」


2人は手を振りながら表へと出て行った。
片付けを残したまま。