お皿を洗い終えた頃には閉店の時間はとっくに過ぎていた。

勿論、お客様は誰もいない。


「海咲ーお疲れ」

「お疲れ様です」


フロアへと戻ればチーフに出迎えられる。
大将は上に行ったのだろう。
静かな空間は少し寂しげで儚い空気が伴っている。


「待っててくれたんですか?」

「ははっ、俺じゃなくて彼がな」

「え?」


ん、と店の外を指さすとチーフはそのまま階段を上っていく。


「外って何……?」


不思議に思いつつも外を覗けば人影が見えた。


「あれは……」


暗闇に佇む人。
それは……。

考える前に足が動いていた。