「改めまして、山瀬 一翔(やませ かずと)です」

「よろしくお願いします! 私は……」


自己紹介をしようとすれば奥から声が聞こえてくる。


「海咲! ちょっと手伝ってくれ!」

「はーい、今行きます! すみません山瀬さん、失礼します」


頭を下げてチーフの元へと駆け寄る。
後ろの方で山瀬さんが何かを言ってる気がしたけど、私には届かなかった。


「チーフ……って何ですかこれ!?」

「皿の山」

「それは見れば分かりますが……」

「バイトが帰った今、これは誰がやると思う?」


ニタリと厭らしい笑顔を浮かべるチーフ。
その理由は分かっている。
大将とチーフ、私の中で1番下なのは言わずともこの私だから。


「分かりましたよ! やればいいんですよね!」


鼻を鳴らし腕まくりをする。


「素直でよろしい。ガンバレヨ」


揺ら揺らと手を振りながら店へと戻って行くチーフを見ながらタメ息を吐いた。