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体を突き刺すのは激しく降り続ける雨だった。
さっきまで持ちこたえていたのに、私の心を表すかのように大雨となっていた。

傘なんて持っていない。
でも、買う気にもならない。

フラフラと暫く歩き続けたが、辿り着いたのは店だった。
帰ってきてしまうなんて……。

もう1度出かけようと足を向けようとするがそれはかなわなかった。
中から聞こえてくる声が足を止めさせるんだ。


「俺は……今でもアイツが好きです。
すれ違って離ればなれになっても、心は昔と何一つ変わってない。
それは花蓮も同じはずだって……信じたいんです」


静かに響き渡るのは拓海先輩の声だった。
激しい雨に途切れてしまいそうなのに、私の耳にはしっかりと届く。

先輩の少し低い声。
昔よりは大人びているけれど……。
昔と何も変わっていなかった。

彼の性格も、笑い方も。
……気持ちも。


「……」


それなのに逃げ出したのは私だった。
あの時、ちゃんと拓海先輩と話し合っていたら……。
こんなことにはならなかったのに……。