守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

***


「……」


夜の街を途方も無く歩き続ける。
何も考えず、ただ無心に。


無意識にたどり着いたのは、拓海先輩と別れたあの場所だった。
ここで、先輩の友達と会って……。


「海咲さん?」


考えていれば急に自分の名前を呼ばれる。
驚いてそっちに顔を向ければ会いたくも無い人が立っていた。


「ちょっ……待って!」


逃げだそうと走り出した私の腕を追いかけて掴む男の人。
この人こそ、私に絶望を与えた張本人、拓海先輩の友達だ。

この人さえいなかったら……。
私はまだ先輩の隣に立っていたかもしれない。

そう思うと憎んでいいのか、感謝していいのか分からない。