”嫉妬”


頭に横切る感情は、もっと黒くてドロドロとした物だと思っていた。
でも、山瀨さんのは違う。

優しくて甘くて……。
私を溺れさせるようなものだ。


「山瀬さん……ありがとうございます」

「何で……お礼なんて……」


場違いとも言える台詞を吐けば、混乱気味に首を傾げている。
それでもきちんと伝えたかった。
自分でも整理し切れていないけれど、今、思っていることを。


「私……山瀨さんが来てくれなかったら……きっと先輩を受け入れてた……」

「……えっ……」

「先輩が好きとか、そう言うのじゃ無くて……。
彼との時間が忘れられていないの。冷たくて、不器用だけど私を包み込んでくれた。
例え、嘘でもその時間が私を解放してくれない」

「ミサキさ……」


山瀨さんの言葉を遮るように頭を下げた。


「こんな馬鹿な女を好きになってくれてありがとう。
でも……私は……きっと前には進めない……」


変わる、そう決めたのに。
ついこの前誓ったのに。

いとも簡単にその決意は揺るいでいく。