「ミサキさん! お帰りなさい!」

「っ!? 山瀨さん……」


聞き慣れた声が後ろから聞こえてくる。
お店の扉が開かれたと思ったら山瀨さんがいきなり私の腕を掴んだ。

それから落ちていた袋を掴み、さりげなく私を拓海先輩から引き離す。
掴まれた腕は痛くないのに、熱く感じた。


「行きましょう。大将が怒ってましたよ? 何処ほっつき歩いてるんだって」

「え……」


それほど時間は掛かっていないはずなのに。
そう思いながらも慌ててお店の方に顔を向けた。


「……失礼します」


それと同時に山瀨さんは拓海先輩に頭を下げて歩き出した。
戸惑いながらも彼に引きずられるように歩き出す。


「花蓮、またな」

「……」


何を言っていいか分からずに拓海先輩に視線を向ける。
寂しそうな顔を見ると胸が苦しくなっていく。