「お前は誤解している」


いつもより低いその声に少し驚くがそれどころでは無かった。
拓海先輩の言葉が胸に突き刺さるんだ。


「誤解……? 今更何を! 私は……私は!!」


我を忘れたように声を上げる。
勢いよく立ち上がり拓海先輩の両腕を掴む。


「花蓮」

「ずっと先輩が好きだった。嘘吐かれてたって知っても……忘れられなかった!」

「……」

「やっと……やっと忘れられると思ったのに……他の人を好きになれるって思ってたのに……」


溢れ出す涙が頬を濡らしていく。
視界がぼやけて拓海先輩の顔すら霞んでいる。


「……やめろよ」

「え……」


小さく聞こえてきたのは拓海先輩の寂しそうな声だった。
包み込むように体を抱きしめられ、耳元で囁かれる。


「忘れるなんて言うなよ。他の奴なんて好きになるな」

「何言って……」


驚きのあまり言葉が上手く出せない。
唇が震えて思わず拓海先輩を見つめていた。