忙しさからあっという間に時間は流れもう少しで閉店の時間だ。
店の中はさっきとは打って変り静かになっていた。
お客様も常連さん数名と山瀬さんだけだ。


「ラストオーダーですが、ご注文はありますか?」

「……サーモン下さい」

「……かしこまりました!」


山瀬さんにオーダーを聞き笑顔で受ける。
冷静を装っているが笑いを堪えるのに必死だ。

山瀬さんは体に反して大食いらしい。
80貫ほどを余裕で食したが、その全てがサーモンだったのだ。
どれだけ好きなんだ、と突っ込みたくなるほどだ。

どれだけ好きでも、何かを挟む人が大抵だ。

こんな人初めて。


「お待たせしました! サーモンになります」

「お、大きい……」

「特別サービスです」


ニコッと笑って小声で話す。


「聞こえてるぞ海咲。給料から引いとくからな」

「お、鬼大将!」

「ほう……今日はタダ働きでいいか」

「す、すみません」


給料の事を持ち出すとはなんと卑怯な……。
そう思いつつ言いかえせずにいれば吹きだす声が聞こえた。