「山瀨さん……」

「なんですか?」


あの日、拓海先輩から逃げ出した時から……。
何処か後ろめたくて。
今を生きているのに、過去ばかり振り向いている気がしていた。

だけど、もう……。


「私……変わりたい! 今度こそ……ちゃんと」


立ち止まってばかりはいられない。
自分で前に進まないと何も始まらない。


「……大丈夫です。ミサキさんなら!」


顔を見なくたって、満面な笑みを浮かべている事が分かる。
そんな優しい声だった。

1つ大きく息を吐いて、そっと山瀨さんの体を押す。


「だから……。
傍にいてくれませんか……?」

「え……」

「傍に……いて欲しいんです」


自分のことは自分でなんとかしなければいけない。
それは十分に分かっている。
それでも、彼に、山瀨さんに傍にいて欲しい。
そうすれば私は強くなれる、そう思うから。