「こ、こんばんは!」


お店に入ってきたのは山瀬さんだった。

スーツを着こなしており何とも絵になる。
目を奪われていたが直ぐに笑顔を作る。


「こんばんは! 1名様ですか?」

「は、はい」

「こちらへどうぞ」


山瀬さんを空いている席に案内をしてカウンターの中へと戻った。
偶然に私が作業をする場所の1番近くが彼の席だった。


「あ、あの!」

「はい! 何にいたしましょうか?」

「……」

「……どうされましたか?」


笑顔を向ければ呆然と口を開ける山瀬さん。
もう1度声を掛ければハッとした様に視線を逸らした。


「さ、サーモン下さい」

「はい、かしこまりました!」


何故か顔を紅くしている。
風邪でも引いたのだろうか。
そんな疑問が浮かんだが、すぐに振り払いお寿司を握る事に没頭する。