「……なんか解決しましたね、寝場所」

「そ、そうですね……」


山瀬さんの言葉に頷き返し寝袋を見つめた。
チーフは山瀬さんの事を良く思っていなかったのになぜ寝袋を……。


『山瀬が寝る布団がなかったら海咲みたいなお人好しは一緒にベッドで寝ようなんて言いだすかと思ってな』


チーフの言葉が頭に浮かび、ハッとした様に息を呑んだ。
もしかして私の為に……。

考えかけて首を横に振った。

チーフがそんな優しい訳がない。
なんて失礼な事を考えて山瀬さんに視線を向けた。


「……寝ましょうか」

「……はい」


明日も仕事だし、早く寝ないと。

気合いを入れていれば、隣で山瀬さんがいそいそと寝袋の準備をしていた。
部屋の中で寝袋……。
異様な光景に苦笑いを浮かべたけれど、すぐにそれは微笑に変わった。
寝袋にも嫌な顔をしない山瀬さんは流石だと思ったからだ。


「……電気消しますよ?」


ミノムシみたいに寝袋にくるまった山瀬さんに声を掛ける。


「は、はいお願いします!」

「……おやすみなさい」

「おやすみなさい」


挨拶を交わしてパチンと電気を切った。
真っ暗な空間。
いつもと同じ部屋なのに……。
むず痒い気持ちになるのは何故だろう。

ベッドに入り目を瞑ったが、高鳴る鼓動が睡魔を遠ざけて中々寝付くことが出来なかった。