「……私……誰にでもこういう事……言いませんから……」

「え……」

「山瀬さんだから。貴方なら……その……信用できますし……」


言葉を濁したのは鼓動が異常な速さで動き出したから。
それでも話したのは、誤解されたくなかったからだ。
軽い女だと思われたくはない。
だがその心配は無かったようだ。
山瀬さんは思い切り首を横に振った。


「君がそういう人じゃないって分かっています! だから心配しないで下さい」

「あ、ありがとうございます……」

「いえ。まあ……そんなに信用されても困るけど……」


最後の方は小さくなってよく聞こえなかった。
でも特に気にする事無く山瀬さんの方に顔を向けた。


「と、とりあえず! 歯を磨きましょうか」

「そ、そうですね」


お互い笑顔だが、どこかぎこちない。
やはり寝る場所の問題が頭にチラついているのだろう。