守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「もう……やめましょうか」

「そうですね」


しゃがんでいた山瀬さんの隣に座り込みそっと彼を見上げた。



「じゃあ、今度こそ名前で呼びますか?」

「え?」

「“花蓮”って」

「で、でも!!」

「今まで名前で呼んでいると思ってたなら平気なはずですけど……」


首を傾げれば、山瀬さんは喉を鳴らして黙り込んだ。
数秒間の沈黙が出来るがすぐに消えていく。


「……か、かれ……かれ……っ~……!!」


何度か試みたみたいだが、震えた唇から私の名前が出る事は無かった。
よほど緊張したのか呼吸が乱れている。
顔を紅く染め上げてその場で両手をつき息を整えていた。


「……だ、駄目です……恥ずかしくてっ……」

「……山瀬さんって純粋なんですね」


名前1つでここまで紅くなれるなんて今どき珍しい。
そう思い笑っていれば山瀬さんは手をついたまま私を見た。