「それと、もう1つ」

「え? これは……」


大将が山瀬さんに渡したのは店の鍵とは別の鍵だった。
あれは部屋の鍵だ。

大将もチーフも、私も、自室には鍵が掛かっている。

あれを渡したという事は山瀬さんもココに住むのだろう。

でもふとした疑問が頭に浮かんだ。


「……え!? 部屋の鍵って……もう空いてる部屋無いじゃないですか!!」


思わず叫ぶ私に大将は不敵な笑みを浮かべた。


「ああ、海咲の言う通り空き部屋は無い。
だが正社員は住み込みだっていう決まりがある。って事で、だ……」


大将は私の方に歩み寄って来て両肩を掴んだ。
その怪しげな表情に嫌な予感がして堪らない。


「海咲と山瀬は相部屋な!」


大将の笑顔に私や山瀬さんは勿論、チーフまで呆然と立ち尽くしていた。