「海咲、サーモン入ってる」

「あ、はい!」


チーフに返事をしてお寿司を握り出す。
仕事、仕事。
気持ちを切り替える様に仕事を再開する。


「はい、お待たせしました!」

「ありがとうよ! 本当に海咲ちゃんの作ったサーモンは絶品だよ!」

「ありがとうございます!」


お客様のその言葉が何より嬉しくて、胸の中のモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。
細かに動いていれば、ガラッと扉の開く音がする。


「いらっしゃいませ!」


出迎えようとカウンターから出る。
暖簾をくぐってお客様の姿が露わになれば、私の体は衝撃を受けた様に動かなくなった。


「……お久しぶりです。ミサキさん」


心地良い声も。
柔らかい笑顔も。

何も変わっていなかった。

2か月前と、何も……。