「……もう勝手にしろ」


チーフはそれだけ言うと階段を上って行ってしまう。
その背中を見つめていれば、大将は怪しげに口角を引き上げると私と山瀬さんを交互に見やった。


「良かったな? 水沢の許可が下りて」

「まあそうですけど……何でそんなに不気味な笑いをしてるんですか?」

「コラ海咲! 何が不気味だ、俺の爽やかスマイルを!」

「……すみません、爽やかには見えません……」


言い難そうにツッコむ山瀬さんを大将は驚いた様に見ていた。
だがすぐに豪快に笑い出して、山瀬さんの肩に腕を回した。


「俺は素直な奴が好きでなー! 愛想笑い浮かべてる奴よりずっといいぜ!」

「大将……それって不気味なスマイルだって自分で認めていま……」

「うるさいぞ! 海咲! 罰として明日1人で店の掃除だからな!」

「……そんなぁ……」


項垂れる私と楽しそうに笑う大将を見た山瀬さんは眩しそうに目を細めた。


「仲が良いんですね」

「ああ、可愛い俺の弟子よ」


大将は山瀬さんの肩を抱いていない方の腕で私の肩を抱いた。