「まっ! 人手が増える事は店にとっても嬉しい事だ!
それに……好きな女の為に毎日店に通える根性があるんだ!
仕事に関しても問題はないだろう!」


大将の豪快な笑い声が店に響き渡る。
それに私も山瀬さんも顔を赤らめた。


「た、大将……何言って……」

「なーに、本当の事だろう?」


未だ笑い続ける大将を黙らすことが出来ない。
山瀬さんも否定しないし……。

固まっていればチーフは、こっちを振り返り小さく口を動かした。


「会社はどうするんだよ。あんな一流の会社に勤めてんのに寿司屋に転職するってか?」


声色から、どうやら納得していないのが分かる。
チーフの言う事は尤もだし、普通ならそんな事を考えたりしないだろう。
でも、山瀬さんの意志はもう固いようだ。


「……はい。引継ぎとか色々あるので……今すぐにって訳には行きませんが、明日上司に辞表を出すつもりです」

「……」

「俺は……もう立ち止まったままは嫌なんです!」

「……」


力強い瞳に何も言えなくなったのかチーフは半ば諦め気味にタメ息を吐いた。