守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「あ、あの俺じゃ駄目ですか!?」

「……え?」


口を開いたのは山瀬さんだった。
何かを決意した様な真剣な瞳。
その姿に見惚れていれば不機嫌丸出しのチーフの声が響き渡った。


「……それってどういう意味で言ってんすか?」

「……俺を……ココで働かせてください!!」


お腹に響く様な声。
本気でそう言っているのが分かった。

私は何故か驚く事はしなかった。
いつかこうなる事が分かっていたのかもしれない。

あの丘で、何か吹っ切れた様な山瀬さんの澄んだ目を見たあの日から……。
彼が今の仕事を辞めると薄々感じていた。

山瀬さんならやりたい事を見つけられるって信じていた。

まさかそれが私と同じ事だとは思いもしなかったが。


「お願いします!」


深く頭を下げる山瀬さんを見て、心が温かくなるのを感じた。