守りたい、不器用な人。～貴方と始める最後の恋～

「ミサキさん？　大丈夫ですか？」

「だ、大丈夫です！」


山瀬さんに声を掛けられて我に返る。
心配そうな山瀬さんの顔を見ると申し訳なさと同時に嬉しさが滲み出てくる。

自分の事を心配してくれている人がいる。
それだけで頑張れる気がするんだ。


「なら良かったです」

「……優しいですね、山瀬さんって」

「そ、そんな事は……」


真っ赤な顔で否定しているがそんな必要はないのに。
クスリと笑みを零せば山瀬さんも笑ってくれる。
和やかに過ごしていれば、低い声が後ろから飛んでくる。


「こら、海咲！　サボってないで仕事しろ」

「チーフ！　別にサボってなんか……」

「ツベコベ言うな！　ほら皿溜まってんぞ。洗って来い」


大量の使用済みのお皿が入った籠を私に押し付けると奥へと無理やり背中を押した。


「えー……優しくしてくれるんじゃあ……」


冗談交じりに言えば柔らかい笑顔が返される。


「ばーか、これが俺の優しさだ」


早く行け、と言わんばかりに手を動かすチーフ。
仕方なく奥へと歩き出した。