守りたい、不器用な人。~貴方と始める最後の恋~

「そ、そんなんじゃあ……」


照れながら否定するが、山瀬さんは私の隣で固まっていた。
口を半開きにして瞬きを繰り返している。
どうやら彼も照れている様だ。


「……」

「……」


黙り込む私たちを囃し立てる様にお客様たちはヒートアップしている。
何か言わないと、そう思って口を開きかければ先を越された。


「おい! さっさと着替えて来い!!」


チーフの怒鳴り声に騒がしかった空間が一気に静まり返った。
驚く皆の顔を見た瞬間、バツが悪そうに頭を下げた。


「すみません、お騒がせしました。海咲、急げ」

「は、はい!」


私はその場で軽く頭を下げて2階へと向かって走り出す。


「チーフがあんなに怒るの珍しいよなー……」

「ああ、いつも冷静なのになー……」


聞こえてくるお客様たちの内緒話。
チーフが心配になって振り向けば、いつになく苛立った雰囲気を醸し出していた。