夜の風が僕の頬を冷やす。今夜は新月…魔物たちが目覚める日。僕は、この街で一番高いビルの屋上から地上を見下ろす。地上では、人間ではありえない身体能力を持つ人型の生き物が人々を襲っていた。人間を襲う魔物。その正体、それは…吸血鬼。ヴァンパイアともいう。文字通り血を吸って生きるバケモノである。人々は吸血鬼を忌み嫌う。まぁ、それは当然の事だろう。吸血鬼は人間の血を食糧とする。つまり、吸血鬼にとって人間は、ただのエサ。家畜なのだ。いくら人間が抵抗しても、吸血鬼の方が力が上。人々は、血を吸われる恐怖、死と隣合わせで生きているのだ。
｢やぁ｣
突然声をかけられて、振り返ると、一匹の吸血鬼がいた。
｢君はどうして、こんな真夜中に外に出ているのかな？アハハッはやくお家に帰らないと、吸血鬼に殺されちゃうよ？｣
吸血鬼な人間を見下している。自分たちが負けるなんてこれっぽっちも思っていない。吸血鬼はニコニコしながらゆっくりと僕にちかづいてくる。僕はにげない。ただその場にじっとたっていた。
｢アレレ？逃げないの？｣
吸血鬼は完全にバカにした話し方で僕の気を引こうとする。もちろん僕は動かずに時が来るのを待つ。吸血鬼は僕に触れられる所まで来ると、身をかがめて身長145cmの僕の耳元で｢いただきます｣と囁いて、首筋に牙をたてた。プツリと小さな音がして、僕の首に穴があく。痛みと共になんとも言えない心地良さに襲われる。