理久の言葉を無視して教室を飛び出して、急いで浬の教室に向かった。

浬は3年生だから、教室は1・2年生の教室とは違う棟にある。

だから、一度中庭に出てから3学年棟に入らなくちゃ。


3学年棟は1・2学年棟に比べて大人っぽい感じがするなぁ。

「異世界…」

でも、やっぱり声をかけてくる人はいるの。

「なぁ!あれ、美明莉ちゃんじゃん!?」

「本当だ!!なんでいんの!?」

「可愛い〜。今日はラッキーだな!!」

「ねぇ、どこ行くの?案内しようか?」

そんな言葉は、まともには聞かずに、小走りで浬の元に向かった。

3学年棟の一番はじの教室が、浬の教室。

やっと着いたぁ~…

息を切らしながら、少しずつ教室に近づいていく。

あと…3メートルぐらいかなぁ??

その時だった…

「あー!誰この子!!」

「ん?えーーー!ちょー可愛い!!!」

「1年生でしょー?こんな子いたんだ!?」

声をかけてきたのは、浬と同じクラスだと思われる女子5人。

目立つ見た目で、真ん中にいる人は、ひときわ目立つ人だった。

たぶん…周りは取り巻きかなぁ??

「ねー、何しに来たの?」

真ん中の女の人が、優しく話しかけてきた。

綺麗な人ぉ〜…

「あ、あの、浬いますか?辞書を…」

私はおどおどしながら言うと、彼女たちは、“浬”という言葉を出した途端、表情が変わった…

まるで、別人だった…

「浬ぃ??なに馴れ馴れしく言ってんの?」

「可愛いからって調子乗んなよ。」

「白石くんをぉ呼び捨てしていぃのわぁ、“由那”ちゃんだけだよぉ?」

笑っている人。

無表情な人。

あからさまに怒っている人。

全部私に向けられている表情。

「“由那”も、なんかいいなよー!」

“由那さん”は、やっぱり真ん中の人らしい。

周りは取り巻きだった。

由那さんって、何者なの?…

「浬は、私の物だから。」

由那さんが、口を開いた。


“私の物”?


「白石くんはぁ、由那ちゃんが好きなのぉ〜」


今まで気づかなかったし、知らなかったよ…

浬が、誰と仲良いのかなんて。

べつに知らなくていい事だけど…

浬に好きな人なんて、いないと思ってた。

だって浬は、いつもの私と一緒にいるし、優しいし、大切にしてくれているから…

なんだぁ…

好きな人いたんだね…


「ご、ごめんなさい…私もぅ、帰ります。」

なんにも言い換えせなかった。


先輩って、怖いんだなぁ…


あれ?

怖いの?

本当に?

他に意味があるんじゃないの?…


もぅ帰ろうとしたその時だった…

「妹ちゃん!?」